前回は留学先を探し、グラスゴー大学でのポジションを獲得するまでの道のりをお話ししました。今回は、ビザ取得という、留学実現のための最大のハードルについて書きたいと思います。
注意事項
これは私の経験に基づく一例です。留学の方法や留学先によって状況は大きく異なりますし、ビザの制度も頻繁に変更されます。必ず最新の情報を確認してください。
まず確認すべきこと:ビザは必要か?
留学準備で最初にすべきことは、自分の留学にビザが必要かどうかを確認することです。
イギリスの場合、6ヶ月以内の滞在で給与が発生しないのであれば、ビザは不要かもしれません。しかし私の場合は、給与はないものの12ヶ月の滞在予定だったため、ビザが必要でした。
受け入れ先が決まっても、ビザが下りなければ出発できません。ビザ取得は留学のスタートを切るための最も重要なステップと言っても過言ではないでしょう。
イギリスビザ申請のタイムライン
調べて分かった重要な事実:イギリスのビザ申請は渡航予定日の3ヶ月前からしかできないということです。
そのため、出発予定日から逆算して計画を立てる必要があります。出発3ヶ月前に申請を始められるように、大体4ヶ月前位から準備を始めるとよいと思います。
ビザの種類を調べる:最初の誤算
最初にすべきことは、自分が申請するビザの種類を知ることです。私はイギリス政府のホームページを見て、該当するビザを調べました。「働く予定か?」「滞在期間は?」などの質問に答えていくと、自分の状況に該当するビザの種類が提示されるシステムです。
私はGlobal Talentなのか!?
私の場合、最初に出てきたのはSkilled Worker visaでしたが、これは一定以上の給与(Minimum Salary)が必要で、無給ポジションの私には該当しませんでした。
次に出てきたのがGlobal Talent Visaでした。対象領域にMedicineも入っているし、「これでいいのかな?」と思いながら、「Global Talentってなんだかかっこいいな」などと呑気なことを考えていました。
書類準備:先輩のアドバイス
ちょうど知っている先輩が直前にイギリスに渡航していたので、準備する書類についてアドバイスをもらいました。
必要な書類:
- パスポート
- 戸籍謄本
- 住民票
- 婚姻証明書(婚姻届の受理証明書)
- 妻と同居していることを示す書類(公共料金の請求書など)
これらをすべて英語に翻訳しておく必要があるとのことでした。婚姻証明書は、婚姻届を提出した役場でしか発行できないので注意が必要です。
書類の準備(出発3ヶ月半前)
渡航の3ヶ月半前に住民票や戸籍謄本を取得しました。同居の証明に関しては、ちょうど参議院選挙の投票用紙が送られてきた封筒の送り状を使うことにしました。
翻訳サービスの選択
書類の翻訳にはいくつか選択肢がありましたが、私は「言通」(https://gentsu.jp/)というサービスを使いました。ここは早くて安いのが売りですが、先輩から「よく確認しないと間違いがあるから気をつけて」と注意されました。
他には、マリアンヌ翻訳(https://www.marianne.jp/uk-visas.htm)などが歴史や実績もあり良さそうでしたが、やや費用が高めでした。
翻訳の発注と確認
言通の翻訳サービスで上記書類の翻訳を依頼したところ:
- 納期:1週間
- 料金:合計2万円
のようでした。実際には5日後に最初に翻訳内容の確認依頼が来たので、先輩の注意もあり細かくチェックしたところ、誕生日の日付が間違っている箇所が一つ見つかりました。そこを修正してもらい、翻訳証明つきの書類をちょうど1週間後に納品してもらいました。
ワンポイントアドバイス:依頼の際に読み仮名が分かりにくいもの(名前のローマ字表記や地名など)は、あらかじめローマ字の綴りを伝えておくとよいです。
いざ申請へ:予想外の壁
出発の予定日まで3ヶ月を切ったので、いよいよビザの申し込みを始めようと思いました。書類も手元にあり、準備万全だと思っていました。
UK Visas and Immigration(UKVI)での申請開始
UKVIのサイトから申し込みを開始しました。ビザの種類を選んで、生年月日やパスポート、住所、両親の名前などを入力していくと、推薦書のアップロード画面にたどり着きました。
Global Talent Visaの現実
当初応募しようとしていたGlobal Talent Visaは、自分がGlobal Talentであることを証明する必要がありました。何か受賞歴があればそれを使えるようなので、どんな賞が該当するか確認してみました。
その中には、ノーベル賞なども含まれています!私が受賞したことがあるのは日本プライマリ・ケア連合学会の日野原賞ですが、残念ながらリストにはありません。
「ノーベル賞と肩を並べるような賞を受賞していないと無理なのかもしれない…」と焦りました。(というか、自分がGlobal Talentなんて該当しないんじゃないかとは薄々思っていましたが…)
他の方法として、学術団体などからの推薦があれば大丈夫なようでした。
グラスゴー大学への相談:方向転換
ここで行き詰まったので、グラスゴー大学の担当者に相談してみました。
「Global Talent Visaの申請をしようと思ったのだけど、推薦書類が必要みたいなのだがどうしたらよいか?」
すると…
「あなたの状況だとGlobal Talent Visaは無理ですね」
(正確には自己推薦という形でPeer reviewを受ける方法があるけど、時間もかかるし現実的ではないとのこと)
新たな選択肢:Academic Visitor Visa?
大学から、留学のためのビザ申請をチェックするための書類記入を依頼され、やりとりをしていたらAcademic Visitor Visaがよいのではと提案されました。
しかし調べてみると、Academic Visitor Visaは家族の同伴ができないかもしれないと出てきました。
「あれ、家族も一緒にイギリスに行くつもりになっているのだけど…まさかの単身赴任!?」
頭が真っ白になりました。
最終的にはTemporary Worker Visaを申請することに
しばらくして、大学から連絡がありました。
「よくよく検討したら、Temporary Worker Visa – Government Authorised Exchangeでいけるかもしれない」
このビザなら家族の同伴もできるとのことで、ようやくこちらで手続きを進めてもらうことになりました。とはいえGovernment Authorizedな留学とは随分格式高そうだなと思いました。
追加書類の準備:時間との戦い
手続きの途中で、自分の所属する医学部長からの証明が必要となり、書類の申請などでだいぶ時間がかかってしまいました。
Temporary Worker Visa – Government Authorised Exchangeの申請に必要な書類が揃ったのは、なんと出発予定日の2ヶ月前でした。
ビザの審査には6〜8週間かかると記載があり、「間に合うのか!?」と焦りました。
前編のまとめ
ビザ取得の前半戦で学んだことは:
- 早めの準備が絶対必要 – 4ヶ月前から動き始めるべき
- 必ず受け入れ先にどのVISAを申請すべきか相談すること
- 書類翻訳のチェックは入念に – 誤りがないか必ず確認
- 想定外の展開に備える – ビザの種類が変わることもある
後編では、実際の申請手続き、指紋登録や費用についてお話しします。

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