私自身で書いた初めてのケースレポートがCureus誌に掲載されました!
A Case of Focal Seizures Presented With Recurrent Sweating and Chills
発汗と寒気を主訴に来院され、最終的に部分てんかんの診断に至ったケースでした。
順天の宮上先生にお声がけ頂き、Tokyo GIM Conferenceで発表させて頂いた勢いでなんとかケースレポートにまでたどり着けました。
今回はCureusという雑誌に投稿しましたが、この雑誌は未来の医学雑誌と称されているので何が従来の雑誌と違うのか書き留めておこうと思います。
Cureusってどんな雑誌?
Cureusは米国のスタンフォード大学の医師が作った全く新しいコンセプトの雑誌です。
2022年からSPRINGER NATUREグループに属しており、PubMedにも収載されるちゃんとした雑誌です。しかも2022年にインパクトファクター 1.2がついたことで話題になりました。
Cureusは画期的な投稿システムとピアレビューの仕組みを取り入れていることで話題になっています。
Cureusのコンセプト
Better Research, Faster Publication, Access for everyoneなどのコンセプトを掲げています。
投稿が楽で、なるべく早く査読が終わり、そして投稿も読む人も無料にして、論文を書くハードルを下げようというのがメインのコンセプトだと思われます。
Cureusの投稿プロセス
Cureusに論文を投稿する際には、Cureusのページから指示に従って入力を進めるだけです。
Cureusでアカウントを作成し、Submit Researchというボタンを押すと以下のような案内画面がでます。
投稿までのプロセスは普通のジャーナルと変わりませんが、他の雑誌の投稿システム(ScholarOneなど)と比べるととても操作性が良いです。
あとは、案内に沿って入力していけばよいだけです!
論文の原稿自体もWordファイルで提出するのではなく、Title, Abstract, Introduction, Method, Result, Discussionのように各パートごとにブラウザに貼り付けをしていきます。
参考文献も独自のシステムがあるので、引用を整えたうえでこのブラウザのシステムにペーストすると取り込まれます。
本文中の引用の仕方も指定されているので、それに沿ったフォーマッティングが必要ですが、間違っているとアラートが出る仕組みになっています。
図や表などもこのブラウザ上で入力することになっています。
最初は戸惑いますが、ワードで元ファイルを作っておけばあとはコピペするだけなので楽です。
独特の査読システム
論文を査読する際に、著者側が査読者を5名推薦します。推薦のしかたもWeb上から氏名、メールアドレスを入れる仕組みです。すでにCureusに登録されている査読者は、検索されて出てきたりします。
Cureusの査読は、Cureus側が招待した査読者が2名以上査読を完了したら終わりになります。
ここが一番おもしろい仕組みなのですが、通常は雑誌側が査読者に依頼を出し、査読者が査読を了承したら査読が始まります。依頼を受けた査読者が査読を終えるまで、査読は終わりません。査読はボランティアで、かつ時間がかなりとられるため査読者によっては期限を大幅に越しても返事がない場合があります。
Cureusでは、複数の査読者候補に依頼を出します。各査読者が、査読依頼にOKを出したか、査読を始めたか、査読を終えたかがシステム上で著者側も確認できます。
私が投稿したときは、まず5名の査読者に依頼が出されました。2日後になっても1名しか査読をうけつけなかったので、システムから自動で「追加で3名の査読者に依頼を出しました」が通知が来ました。そこでさらに2名が査読を了承してくれました。
このように査読者が、査読依頼に反応しない場合にはシステム上で自動で査読者が追加されていくというのが面白い仕組みだなと思いました。
査読依頼を受け付けると次の表のように各査読者のプロセスが表示されます。
査読者 | ステータス |
Reviewer Alpha | 査読依頼了承 |
Reviewer Beta | 査読中 |
Reviewer Gamma | 査読完了 |
このように査読の状況が著者にも確認でいると安心ですね。
そしてCureusでは、Cureus側が招待した2名以上の査読が終われば査読終了になるので、このケースでは1番目のAlphaの人が査読を終えてくれなくてもBetaとGammaの人が査読を終えれば査読終了になります。
私の場合もこのパターンで最初に査読を了承してくれたReviewerが査読する前に、あとから追加された2名が査読を終えてくれて査読終了となりました。
査読が終わるとコメントが返されます。査読コメントに応じて、再びシステム上から論文の本文を修正して、査読のコメントの返事を書くと再投稿できます。
査読が早い&建設的
論文を提出すると「Peer review, not peer rejection.」というワードが出てきます。
Cureusでは、建設的なReviewをして論文を良いものにするためにReviewをしており、落とす論文を選ぶためにReviewをしていないという理念の説明がありました。これは論文を投稿する側にとってはとても嬉しいことです。
実際のReviewのコメントも改善すべき点を端的に指摘してもらい、とても気持ちよく改訂することができました。
アクセプトから出版まで
Reviewの内容にもよるかもしれませんが、査読の対応をするとEditorの判断待ちになります。
大体1日後には、結果が返ってきます。
アクセプトになると論文の出版プロセスに入ります。そして2,3日後にはPDFバージョンの論文が出来上がり、最終確認をするとそのままPublishとなります。
他のジャーナルでは、アクセプトから論文公開までも数週間〜1ヶ月くらいはかかることがあるので、数日で公開までいくのはとても早いです。
出版料/投稿料
CureusはOpen access journalなので読むのは無料です。通常はOpen accessの雑誌はAPC(Article Processing Charge)という投稿料が請求されることが多いです。このAPCはとても高額で、原著論文だと20〜50万円にもなります。このような高額なAPCの請求は、研究者を萎縮させるということで、Cureusは投稿料も無料です。
しかし、論文の英語表記や出典の記載の仕方などに問題があり、校正(Copy editing)が必要な場合にはCopy editing feeは、論文の種類や長さにも寄るようですが、平均$340とAPCに比べると格安です。
Copy editingが必要かどうかは、最初の投稿時のEditor checkで判断され、校正費用を払わないと査読に進まない仕組みになっています。
私の場合は、英文校正に出さずに投稿したせいかこのCopy editingの基準にひっかかり$340払いました。まぁ英文校正に出すよりは高くついてしまったかもしれませんが、Cureusの投稿は楽しかったので勉強代です。
投稿にかかった時間
投稿日 2024年1月12日
査読開始 2024年1月13日
査読完了 2024年1月19日
再投稿完了 2024年1月24日
アクセプト 2024年1月25日
論文公開 2024年1月29日
投稿から公開まで2週間くらいというスピードでした。これくらいサクサク進んで、進捗もWeb上で確認できるととても気持ち良いですね。(別の論文は、投稿から2週間たっても担当Editorが決まらず、1ヶ月でReviewer selectionで止まっています)
Cureusに投稿すべきなのか?
Cureusは、ケースレポートだけでなく様々な分野の原著論文も受けてつけています。
インパクトファクターはついたものの、まだまだ新しい雑誌なので今後どうなっていくかはわかりません。ただ、いろんなジャーナルにリジェクトされてしまい投稿を諦めるくらいならCureusに投稿市てみてもいいかもしれません。
個人的にはこのスピード感はかなり好印象なので、ケースレポートならCureusでいいんじゃないかと思いました。
みなさんもどこに出すか悩んでいるケースなどあれば、Cureusを検討してみてもいいかもしれません
ケースレポートを書く時に参考になる本
ケースレポートを書きたいと思いつつ、なかなか書けない人も多いのではないかと思います。自分もそうでした。興味深いケースに当たっても、結局どう書けばいいかわからずお蔵入りすることも多々。。。
ケーレポートを書く時に私自身が参考にした教科書をご紹介しておきます。
ケースレポートのときにどんなメッセージを強調して書けばいいのかとても参考になりました。
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