総合診療のコンピテンシー

院内の勉強会のためにまとめてみたものを共有します。


【総合診療を担う医師の呼び方】
Family Physician:いわゆる家庭医。主にアメリカ、カナダなどでの呼び方。主に外来で年齢や性別にかかわらずプライマリ・ケアを提供する。研修病院では、産婦人科や病棟診療も担っている。専門医取得後には病棟や産科をやらない人も多い。
Primary Care
Provider(PCP)
:(米国で)プライマリ・ケアを担う人
を指す。家庭医以外に内科、小児科の外来医、診療看護師(NP; Nurse Practitioner)などを含む。
General Practitioner(GP):イギリスなどヨーロッパでの呼び名。イギリスでは、GPは外来診療のみを扱う。産科医療は助産師と産婦人科医が担っている。
Hospitalist:米国での内科医のキャリアのひとつ。病棟の内科管理全般を行う。外来は行わない。家庭医からHospitalistになる場合もある。
総合内科医(GIM):日本において外来〜病棟の成人内科疾患を診る医師。小児、産婦、整形などは診療範囲外であることが多い。基盤は内科専門医で、日本版ホスピタリストとも呼ばれる。
総合診療医(新専門医制度):家庭医的外来診療(小児・婦人科も含む)+成人内科病棟+在宅診療を担う医師。
【プライマリ・ケアの定義:ACCCA(1978年)
プライマリ・ケアの機能を端的に表現したもの。
Accessibility:物理的、心理的、社会的に良好なアクセス
Comprehensiveness:どのような問題にも対応する
Continuity:病気の前後や健康時にも関わる継続性
Coordination:チームでケアを協調して行う
Accountability:責任あるケア

出典)https://www.nap.edu/catalog/9932/a-manpower-policy-for-primary-health-care-report-of-a

日本プライマリ・ケア連合学会のHPにも記載(http://www.primary-care.or.jp/paramedic/

【家庭医療の9つの原則 By
McWhinney(初版1981年)
家庭医療の父とよばれるカナダの家庭医Ian Mcwhinney著「Textbook of Family Medicine」に記載されている。

1. 家庭医は人間に関わる。関わりは健康上の問題の種類によって制限されない。健康な時から関係は始まり、終わりはない。
2. 家庭医は、病気のコンテクストを理解しようとする。多くの病気はコンテクストの中で見なければ完全には理解することができない。
3. 家庭医は、患者と出会うすべての機会を予防や健康教育の絶好の機会とする。
4. 診療対象を「リスクを持った人の集団(population at risk)」として考え、普段通院していない層へのアプローチも行う。
5. 家庭医は、自分自身を、健康問題をケアし支援するコミュニティー・ネットワークの一部分とみなす。
6. 理想的には、家庭医は自分の患者たちが住んでいる同じ地域に住むべきである。
7. 患者を患者の家で診る。家で起こる人生の大きな出来事に患者の家族とともに立ち会うことが、家庭医にその患者と家族についての多くの知識を与える。
8. 主観的な面を重要と考える。患者の感情のみならず、自分自身の感情を意識することも含まれるので、家庭医療は自己を省察する医療である。
9. 医療資源のマネージャーである。限られた資源を患者とコミュニティー全体の利益のために管理する責任がある。

WONCA Europeの定義
2011年)】
2011年度版のWONCAヨーロッパの委員会によって策定されたGeneral Practice/Family medicineの定義(https://www.woncaeurope.org/page/definition-of-general-practice-family-medicine

.人々にとってヘルスケアとの最初の接点であり、制限のない近接性を提供し、その人の年齢・性、その他どんな特徴にも関わりなく全ての健康問題を扱う。
. ケアを調整し、プライマリ・ケアの設定で他職種と協働し、他の専門分野のインターフェイスを管理し、必要なときに患者を擁護する役割をとる。これらのことを通してヘルスケア資源を効率よく利用する。
3. 個人、その家族、そしてその人達の住む地域を志向する人間中心のアプローチを展開する。
4. 患者のエンパワーメントを促進する。
5. 医師と患者の効果的なコミュニケーションを通して長年の関係を築き上げるという独特のプロセスを経る。
6. 患者のニーズによって決定される長く継続するケアを提供することに責任を持つ。
7. 地域での病気の有病率と発生率で決定される特異的な意志決定過程を持つ。
8. 個々の患者が持つ急性、慢性両方の健康問題を同時に対応する。
9. 病初期で鑑別できていない状態であってもその病気に対応する。中には救急の介入を要するものもある。
10. 適切で効果的な介入によって健康と幸福を増進する
11. 地域の健康への独自の責任を持つ。
12. 身体的、心理学的、社会的、文化的、そして実存的次元で健康問題を捉える。
【米国家庭医療学会AFPの定義(1984年)】

家庭医療は、個人とその家族に対して継続的、包括的ケアを提供する。基礎医学、臨床、行動科学が統合された専門分野である。診療の範囲は、全年齢、全性別、すべての臓器とすべての疾病に及ぶ。
【日本専門医機構による総合診療医のコンピテンシー(2015)
2015年に発表された日本専門医機構による総合診療医のコンピテンシー
1.人間中心の医療・ケア Person-centered care
2.包括的統合アプローチ Comprehensive care,
Integrated care
3.連携重視のマネジメント Interprofessional work
4.地域志向アプローチ Community orientation
5.公益に資する職業規範 Professionalism
6.診療の場の多様性 System based practice

こうやって並べてみると共通項が見えてきますね。
WONCAヨーロッパの定義は、項目が多い上に少し分かりにくい気がします。
AFPの定義はシンプルだけど、少し無機質な感じがします。
日本専門医機構のものも項目としては、ほぼ踏襲されている感じがします。ただ、これらは概念的かつ抽象的で、どの医師にも求められることじゃないの?という印象をもたれてしまうのではないでしょうか。
総合診療をうまく説明するのは難しいですね。

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