症例の複雑性の定義の記事を書きましたが、そのような複雑そうな症例にどのようにアプローチしたらいいのかということを考えて行きます。
まずは、症例の複雑性がどこから由来しているのか分析する必要があります。そのような分析ツールは、INTERMED, MCAM、PCAMなどさまざまあります。
その中で、今回はINTERMEDについて調べてみました。
【INTERMEDのなりたち】
Engelの提唱したBio-Psyco-Socialモデルが背景にあり、どのようなケースにも統合的ケアを提供するために作られた。症例ごとにケアのニーズがどこにあるかを評価するためのツールとしてオランダのHuyseという医師によって開発され、1999年に発表された。(引用1)
もともとの論文は、2つの研究から構成されている。
Study1:入院患者を内科医、精神科医が評価し、評価者バイアスがないかを検討
Study2:精神科のレジデントがインターンが外来患者、入院患者を評価
この2つの研究で、INTERMEDに含まれる項目や評価者バイアスを検討して発表されている。
さらにこの論文はTwin paperになっていて、2本目の論文で腰痛で通院している外来患者でValidationされている。(引用2)
【内容】
Biological/Psycological/Socialに加えてHealth care(医療との関わり)の4つのドメインを、過去(病歴)、現在(現症)、そして未来(予後)の3つの時間軸で評価を行う仕組みになっている。
それぞれの項目において、0(脆弱性やニーズなし)〜3(脆弱性やニーズが高い)の4段階で評価する。
下記の日本語版INTERMEDは、Validationもされている。(引用3,4)
【使い方】
20分程度の患者へのInterviewを通して、全20項目に0−3点の4段解釈度を付ける。
最も高いレベル3のポイントがついた領域を中心に介入プランを立てていく。
評価とアクションが直結するような仕組みになっている。
詳しくは下記を参考に(英文)
http://www.intermedconsortium.com/wp-content/uploads/2015/04/Description-of-IM-CAG-v6-including-interview-and-score-December-2009.pdf
具体的な事例での使い方を知りたい人は
https://webview.isho.jp/journal/detail/abs/10.11477/mf.1661100421
を読んでみるといいです。
【有用性】
様々な論文が報告されているが、内科入院患者においてINTEMEDの点数が高いと複雑な介入を要し入院期間が延長するという報告がある。(引用5)
INTERMEDは主に入院患者で用いるという記載を目にするが、もとの論文でも外来患者を対象にしており、特に対象疾患や患者を限定するものではない。むしろ精神科領域から派生してきている。
また、高齢者向けのINTEMED for elderlyや患者自身が記入するSelf assessmentの形式も作られている。(引用6)
また、INTERMEDについて国際的なチームを作り研究しているコンソーシアムがあるようなので、こちらのサイトも有用です。各国語のツールや今まで発表された論文が載っています。 http://www.intermedconsortium.com/
<メリット>
・入院でも外来でも疾患にかかわらず使用可能
・評価と介入が直結している
・いろいろな言語に翻訳されている
<デメリット>
・各項目の評価がやや煩雑で慣れないと難しい
・1ケース20分くらいと時間がかかる
【引用文献】
1)Gen Hosp Psychiatry. 1999 Jan-Feb;21(1):39-48.
2)Gen Hosp Psychiatry. 1999 Jan-Feb;21(1):49-56.
3)精神経誌. 112 (12): 1203-1209, 2010
4)J Psychosom Res. 2010 Dec;69(6):583-6
5)Psychosomatics. 2001 Mar-Apr;42(2):106-9.
6)PLoS One. 2017 Nov 30;12(11)
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