ウェブサイトを用いた外来でのAdvance Care Planning

最近ブログの更新が滞っていましたが、一人ジャーナルクラブシリーズす。
今回はAnnals of Family Medicineの2020年3−4月号より
“Effect of an Interactive Website to Engage Patients in Advance Care Planning in Outpatient Settings”
PREPARE」というインタラクティブにACPについて考えてもらうWeb siteを用いて、患者のACPに対する理解や準備が進むかどうか検討した研究です。
このPREPAREというサイトは、ビデオ紹介される患者のストーリーを見ながら5段階のプロセスでACPについて考えてもらうという構成になっています。質問に答えることで、最終的に”私の希望 Summary of My Wishes”を作成できます。
1. Choose a Medical Decision Maker
2. Decide What Matters Most in Life
3. Choose Flexibility for Your Decision Maker
4. Tell Others About Your Wishes
5. Ask Doctors the Right Questions
実際の研究のデザインと結果は以下の通り
【Methods】
<セッティング>
カナダで行われた研究で、プライマリ・ケアの場での一般患者を対象にした群とがんセンターでがん患者を対象にした群が作られた。
プライマリ・ケア診療所(Ontario11ヶ所、Alberta1ヶ所, British Columbia 3ヶ所), がんセンター(British Columbia 1ヶ所)
<対象患者>
英語を使え、家でインターネットにアクセスできる患者
プライマリ・ケア診療所:50歳以上の患者
がんセンター:18歳以上患者
<期間>
期間:2015年6月〜2016年9月
<リクルート方法>
リクルート方法:基準を診たう患者にリサーチアシスタント(RA)が電話で勧誘し、同意を得た。
<フォローアップ期間>
フォローアップ期間の中央値は6.6週
<Outcome>
(詳しくはこちらから:https://prepareforyourcare.org/research)
ACPに対する準備度の変化をみるBehavior change processのドメインと、実際にACPを行っているかどうかActionのドメインから構成されている。
【Result】
最終的にプライマリ・ケアセッティングで89名、がんセンターで72名が参加した。
参加者の年齢は、全体で65.6歳(プライマリ・ケア:64.9歳 、がんセンター:66.8歳)
メインのAdvance Care Planning Surveyのスコアにおいて
Behavior change processドメインの点数は全ての下位領域において改善(2.9→3.5, mean change = 0.6; 95% CI, 0.49-0.73)でEffect sizeは0.75であった。
Actionドメインに関しては、総得点が改善 (4.0→5.2, mean change = 1.2; 95% CI, 0.54-1.77) Effect sizeは0.23
※Effect sizeはCohen’s dで検討されている。これは測定された差が標準偏差の何倍かどうかを計算することで差の大きさを示すもの。目安としては、小:0.2、中:0.5、大:0.8
【Discussion】
・患者が自分でオンラインのプログラムを利用するだけで、ACPに対する行動変容が促された。
・今回は、研究助手による介入で実際の外来で臨床医の対話に結びついたのかどうかはわからず、外来主治医からプログラムを紹介された方がその後の対話にも結びついていいかもしれない。
・75%の患者が実際にPREPAREを使ったが、リサーチアシスタントのリマインダーの影響が大きいかもしれない(実際に外来で紹介するだけでは使わない人がもっと多いかもしれない)

・今回用いたAdvance Care Planning Surveyのスコアの改善が、終末期のアウトカムの改善にどのように結びつくのかはまだ不明 
【感想】
ACPを外来で行うには時間もかかるので、導入としてこのようなWeb siteが役にたつのであればぜひ日本語版も出たらいいなーと。
あとは、このような研究ではアウトカムの設定が非常に難しいですね。今回使ったAdvance Care Planning Surveyの点数の改善が、実臨床でどこまで意義のあるのかという疑問が常に付きまとうので解釈が難しいですね。

コメント

  1. 岡田 唯男 / Tadao Okada, MD, MPH, DABFM, FAAFP より:

    これリサーチフェローと読みましたが効果量が小さいのとベースラインのスコアが小さいのでほとんど行動変容には結びついていないんですよね。

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