大学病院で働く女性研修医は、子供を持つことがキャリアにネガティブな影響を及ぼすと感じている

後輩の研究の相談に乗るために調べていたら見つけた論文です。
オープンアクセスなので是非読んでください。

BMC Med Educ. 2018 Nov 13;18(1):260.(↓をクリックで文献に飛びます)

Female trainees believe that having children will negatively impact their careers: results of a quantitative survey of trainees at an academic medical center

Stanford大学で研修中のレジデント(日本で言う専攻医)について、子供をもつことに対してどう感じているかどうかアンケート調査をした研究です。

776人中435名(56%)から解答が得られた。

男性の方が女性と比べて子供がいる率が高い(26% vs 22%, p=0.02)

まだ子供がいないレジデントでは、女性のほうが子供を持つことの不安が大きい。
「子供をもつことについて考えると悲しくなる」(女性16.8% vs 男性8.5%)
「これから先ずっと子供を持てないのではないか」(75.5% vs 46.6%)

研修中に親になることがキャリアへ及ぼす影響についても
「職業上不利になる」(41% vs 10%)
「将来のキャリアにマイナスに働く」(50% vs 27%)
「同僚の負担になる」(63% vs 43%)
と女性の方がネガティブに感じている割合が高い。

外科系・内科系で比較すると外科系のほうがキャリアにネガティブな影響を及ぼすと感じている。

産休や育休などの制度(Family leave)はあり、制度上利用できることは知っているが、半数以上の研修医が出産や育児などで仕事を休むことは現実的には難しいと感じている。

また、研修中の進級に関して何日間まで仕事を休めるかということが、約半数の女性研修医がこどもを持つかどうかという意思決定に影響している。

子供の世話に関しても男性と女性での負担割合(平日日中、平日夜、休日で分けている)が異なることも示されています。女性の方が平日夜に自分自身で世話をしている割合が多く、男性のほうが配偶者が世話をしている割合が高いようです。

子供を持つことがキャリアへのマイナスな影響を及ぼすと思っているのは男性の方が少ないのにも関わらず、育休を取りにくいと思っているのは男性の方が多い。これは逆説的に「子供を持っても仕事を離れられない」と思っているから「自分のキャリアに影響しない」と感じているのでしょうね。

Discussionの部分で引用されていた部分で印象的だったのは、「男性研修医の配偶者や一般人口と比較して、女性研修医では早産、流産、IUGR、胎盤剥離、高血圧などが多いことが報告されている」というところでした。キャリアに関することもそうですが、そもそも出産にも医学的な悪影響が出ている現状ということは大きな問題ですね。

単施設のアンケート調査ですが、我々が感じている問題を実際に数値として出していることに大きな意義がありそうです。

この問題は、制度や文化など様々な問題が複雑に絡み合っていて一朝一夕で解決はできませんが、まずは現状を明らかにして問題点を整理していくことが必要そうですね。

その点では、後輩が取り組もうとしている研究に非常に期待しています(笑)

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