医師のコスト意識

医学教育

新しい年になりあっという間に3週間が経ってしまいました。
ブログの更新が滞っていたので、先日古巣の病院でやったレクチャーの内容をまとめます。

月1回のスタッフレクチャーが課されているのですが、毎月新しいテーマを考えるのが大変です。(自分が始めた企画に自分が苦しめられている。。。)

どうせならばなかなか専攻医が自分では勉強しないけれど、知っていた方がいいことをテーマにしたいなと思っています。

そこでHospitalistに役立ちそうなトピックがないかなと、論文探しをしていました。

ACP(米国内科学会)のホームページで見れるACP Hospitalist Weeklyで注目の論文をざーっと見たりしてました。

あとは、Society of Hospital MedicineのジャーナルであるJournal of Hospital Medicineの過去の論文を斜め読みしたりしてました。

最終的に選んだのはこの論文

25名のホスピタリストに対して、14種類の検査や処置のコストを聞いて実際のコストとの比較をした研究。

皆様の予想通り、ホスピタリストが予想するコストは実際のコストとずれている事が多かったようです。
予想したコストが、実際の値のプラスマイナス20%に入っていた割合はわずか17.8%でした。

最も実際のコストからかけ離れることが多かったのは腹部CTで、±20%に入ったのはわずか4%(1人)でした。

似たような研究は他にもあり、J Grad Med Educ. 2011 Jun;3(2):182-7では、126人の内科医に同様のアンケートを行いやはり医師が感じている診療のコスト感覚は実際のコストからかけ離れていることが示されています。

コストを知ることは、診療における意思決定に影響することも知られております。(J Gen Intern Med. 2015 Jun;30(6):835-42

そこで、コストに関する教育をすると無駄な検査や治療を減らすことはできないのか?という研究も行われています。(J Grad Med Educ. 2013 Jun;5(2):284-8

レジデントに対して、腹部CTの適応、1回のCTの被曝量、1回のCTのコストに関するレクチャーを行い、内容が記載されたポケットカードを配布しました。その前後で担当患者の腹部CTの撮影回数と、患者の在院日数や死亡率などが調べられています。

結果としては、在院日数や院内死亡率などの患者アウトカムは変わらずに、患者あたりのCT撮影回数や被曝量が有意に減ったという結果になりました。

単回のレクチャー+ポケットカードを配布するだけで、患者アウトカムを損ねずに無駄な検査を減らしたという素晴らしい研究ですね。

これらの研究を紹介しながら、日本におけるX線、CT、MRIのコストのクイズや、外来における採血のコストの発生の仕方、入院におけるDPCの仕組みなどをレクチャーしました。

ポケットカードを作るまでの余裕はなかったですが、専攻医たちの行動が変わるといいですね。

来月のテーマ何にしよう・・・・

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