ひとりJournal Clubシリーズ
Annals of family medicineの2020年1−2月号に載っていた論文より
Caregiver and Clinician Perspectives on Missed Well-Child Visits
【背景】
アメリカ小児科学会は6歳までに13回の健診(Well child visit)を推奨している。病気の発見や予防接種、情報提供の機会となっており、入院や救急受診をへらすことが示されている。一方で健診の機会のうち30−50%は、受診されていない。貧困や無保険、アフリカ系アメリカ人などは、健診未受診との関連が示されており、多くの州で受診を促す取り組みもされている。15年前に行われた研究では、交通の便、仕事、待ち時間、健診の必要性の理由が分かっていないことが未受診の原因となっていることが報告されている。
【方法】
17人の養育者と6人の医師(家庭医、小児科医)にインタビューを行った。
健診未受診歴が2回以上ある小児の養育者と医師を対象とした。(スペイン語話者も含む)
養育者に対しては郵便で連絡をとり、医師に対してe-mailで連絡を撮った。最初の連絡に応答がなかった対象者には2回目のメッセージを送った。
10−20分間の電話での半構造化インタビューを行い、3つのドメインに関する質問をした。
・健診の意義
・健診受診への障壁
・何が健診受診を促進するか?
インタビューワーは2名とも女性で1人は医学生、1人はスペイン語を話す質的研究者であった。被検者とインタビューワーはもともと関係性はなかった。
プライバシー保護と率直な意見を述べてもらうために参加者の背景情報は得なかった。
養育者には報酬として25ドルのギフトカード贈り、医師には参加の報酬はなかった。
インタビューは録音したものを文字起こしし、スペイン語のものは英語に翻訳を行った。
Ground theory approachを用いて解析を行った。
3名の解析者で、5つのインタビューを解析し、初期のCodebookを作成した。その後そのCodebookを用いてインタビューを解析し、コンセンサスに基づいてCodebookを修正した。
最終的に3つの要素に分類された。
1)小児健診の重要な側面(Valuable aspects of well-child visit)
2)健診受診への障壁(Barriers to well-child visit attendance)
3)小児健診受診を促進するもの(Facilitators of well-child visit attendance)
その後養育者と臨床医の視点からグループ化されたものを主題分析法(Thematic Analysis)を用いて解析した。
【結果】
205人の英語話者と95人のスペイン語話者の養育者が研究に招待され、最終的に12名の英語話者、5名のスペイン語話者が参加に同意した。
医師は23名中6名が参加した。
養育者も臨床医も、予防接種、病気の発見、成長・発達のモニタリングが健診の重要な側面であると認識していた。
臨床医と家族の長期的な関わりも双方にとって重要であると認識されていた。
臨床医も養育者も交通手段の確保と仕事で休みをとることが、健診受診の障壁となっていると答えた。
養育者は、経済的な問題がその背景にあると答えた。
幼い子供の面倒を見ることと、年長児の学校の予定と養育者自身の病院受診の予定との間で優先順位をつけることについても述べられていた。
臨床医は、予防接種があるタイミングでの健診に関しては、養育者が重要だと思うのではないかと考えていた。また、移民であったり母国語の違いは受診の障壁になるのではないかと予想された。
スペイン語が母国語の養育者は、言語に関するサービスがあると検診受診にもう少し関心を持つと感じている。
【考察】
養育者も臨床医も予防接種、病気のスクリーニング、成長・発達のモニタリングが健診の意義であることを認識していた。
健診受診の障壁として、交通や経済的問題、仕事を休めるかなどといったことに加え、母国語の違いや移民かどうかということも挙がっており、健診未受診とSocial Determinants of Health(SDH)の関連が示唆された。
Limitationとしては、参加者のリクルートを郵便でおこなったためリテラシーの低い層や住所不定の層が除外されていることが上げられる。また、リクルートした郡の参加率が低いこともバイアスを生んでいる可能性がある。リーチしにくい層の意見を集めることが今後の課題である。
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