【AFP review】青少年へのスクリーニングとカウンセリング

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2020年2月1日号のAmerican Family PhysicianのReviewのまとめです。

青少年へのスクリーニングとカウンセリング

テーマは、青少年の患者へのスクリーニングと問診です。あまり病気にならない年代だからこそ、風邪などで受診した際にチャンスを逃さず介入することが大事ですね。問診のフレームワークやソーシャルメディアの話題など学びがたくさんありました。明日からの診療に役立つことがたくさんあるので是非本文にもお目通しを!

背景

10−24歳の青少年(Adolescent)は、子供と大人の間のライフステージで、肉体的にも精神的にも成長し、社会的な役割も変化する重要な時期である。米国での10−24歳の死亡原因は、交通外傷(22%)、その他の外傷(20%)、自殺(17%)、他殺(15%)が多い。日本では、不慮の事故、自殺、悪性新生物が多い。(https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/suii09/deth8.html

さらに性にまつわる問題や薬物、ソーシャルメディア、摂食障害なども重要な件高校問題になっている。この年代は、急性疾患でしか医療と関係せず予防的な介入を受ける機会が少ない。一方でこの年代は、健康に関する情報をインターネットから入手するため、病院受診時に医師患者関係を構築し、正しい情報を伝え、予防的な介入をすることが重要である。

病院受診時のアプローチ

<秘匿性 Confidentiality>

この年代では匿名の方が医療へのアクセスが向上するため、常に匿名でのスクリーニングやカウンセリングの機会を提供すべきである。しかしながら、60%の場合で患者と医師が二人きりになるチャンスがないまま診療を終了している。「これはどの患者にもお願いしていることだが、自分の健康に対して自分で考えをもつ年代なので、あなたの息子/娘さんに個別でお話する時間を作ってもいいですか?」などの声掛けをするとよいかもしれない。メンタルヘルス、薬物使用、性にまつわることは、センシティブな問題なのでプライバシーに配慮した環境を作ることが重要。<Strength-based Interviewing>学校や仲間、家族、コミュニティーの中で自分の価値を認められ、力づけられると健康的な発達は促進される。患者の自信を高めて行動変容に導くために動機づけ面接法やShared Decision Makingが役に立つ。

SSHADESSモデル

患者の強みにフォーカスしたアプローチで、学校のことなど答えやすい質問から入り、感情やストレスに関する広い問診を行う事ができる。チェックリストのように用いるのではなく、患者のコンテクストに応じて患者の病歴を聴取する。患者が個人的な情報を明かしてくれたことに感謝し、共感的に医療者としての懸念を示す。「分かるよ」や「それはそんなに大したことじゃない」というような発言は控える。時間がないときは、現在のストレスや学校や職場での体験を聞くと、Well-beingの指標になる。事前の問診票は時間短縮になるが、患者のアウトカム改善や医師のアクションにつながるというエビデンスは乏しい。毎回の診察でプライバシーに配慮し、隠れた受診理由を拾い上げるようにする。自殺をした青少年の50%は、1ヶ月以内にプライマリ・ケア医の診察を受けている!

Strength

  • 好きなことはなにか?
  • 自分のことをどんな人間だと思っているか?
  • 自信があることは何か?

School

  • 学校で楽しいことはなにか?
  • 成績はどうか?
  • 学校への行き帰りや学校生活は安全か?

Home

  • 誰と住んでいるか?
  • 一緒に住んでいる人の中で誰と仲がいいか?
  • 何かストレスがあったときに話せる家族はいるか?

Activities

  • 家族以外で信用できる友人や大人はいるか?
  • 何か課外活動に参加しているか?
  • 友達と過ごす時間は減っていないか?

Drugs

  • 友人と喫煙や飲酒、薬物使用の話をすることはあるか?
  • 喫煙、飲酒や薬物を使ったことがあるか?
  • もしあるならばその時どのように感じたか?

Emotions/Eating

  • ストレスは感じているか?
  • 睡眠は取れているか?
  • 気分が落ち込んだり悲しくなることはないか?
  • 自分を傷つけようとしたことはないか?
  • 健康的な食事をとっているか?
  • 体重を増やそうとしたり減らそうとしたりしているか?

Sexuality 

  • 誰か気になる相手はいるか?(性的にニュートラルに質問する)
  • 惹かれる相手は、男性か、女性科あるいは療法科?
  • 性的な経験はどこまであるか?
  • どのように自分を守っているか?
  • 妊娠を心配するようなことはあるか?
  • 性感染症の心配をしたことがあるか?

Safety

  • 学校で喧嘩はないか?
  • 武器を持ち歩いたりはしていないか?
  • 学校で安全にすごせているか?
  • いじめられていないか?

青少年に推奨すべき項目

ソーシャルメディアの利用


新聞やテレビなどの従来のメディアや新しいソーシャルメディア、双方向性のビデオゲーム、その他のデジタルコンテンツは青少年が多様な情報にアクセスしたり社会的サポートの向上につながるが、不眠や気分障害などの健康問題や個人情報の流出、不正確な情報への接触などネガティブな面もある。臨床医は、メディアの利用状況を確認し、家族にデジタルリテラシーや家族内でのコミュニケーション、コンテンツや個人情報の管理などを教育すべきである。家族のソーシャルメディアの利用についての情報が載っているサイトもある。

※Facebookが公開しているデジタルリテラシーライブラリは日本語にも対応

問診すべき項目

  • 1日にに何時間くらいスクリーンを見ているか?
  • インターネットを使って何をしているか?
  • 写真やメッセージを送って後で公開したことはあるか?
  • インターネットを利用することで悪いことが起きている友人がいるか?
  • ポルノグラフィーを見ることはあるか?
  • 自分の裸の写真を誰かに送ったことはあるか?
  • 最後に運転中にメールを送ったのはいつか?

推奨すること

  • 個人情報のプライバシーの設定の確認
  • デジタルリテラシーについて話し合う
  • 学習以外のスクリーンタイムを1−1.5時間以内に
  • 1日1時間以上身体活動を
  • 8−12時間の睡眠を
  • ソーシャルメディアを使いすぎないようにする工夫を話し合う
  • メンタルヘルスのリスクを評価
  • 寝室に電子デバイスを持ち込まない
  • 就寝1時間前にスクリーンを見ない
  • ネットで起こるコミュニケーションの問題について家族間で話せる習慣を作る

薬物使用

アメリカ小児科学会は、臨床医は青少年の薬物使用のスクリーニングを行い必要であれば、ブリーフインターベンションを行うことを推奨している。

CRAFFT+N

下記の項目の頭文字を取ったもので、感度が高いツール。https://crafft.org/で公開されている。

  • Car:アルコールや薬物を使った状態で運転したことがあるか?
  • Relax:リラックスするためにアルコールや薬物を使用したことはあるか?
  • Alone:一人でいるときにアルコールや薬物を使用したことはあるか?
  • Forget:アルコールや薬物を使用中に自分が何をしたか忘れてしまったことはありますか?
  • Family/Friends:家族や友達から、アルコールや薬物の量を減らすように言われた事はありますか?
  • Trouble :アルコールや薬を使用している時に、何かトラブルに巻き込まれたことはありますか?
  • Nicotine:タバコやニコチンを含む製品(例えば、紙巻きたばこ、電子たばこ、水煙管、無煙たばこ等)を使用しましたか?

日本語版のスクリーニングシートもダウンロード可

https://crafft.org/wp-content/uploads/2019/10/Japanese_CRAFFT2.1_Clinician-Interview_2018-12-21.pdf

性にまつわる健康問題

青少年期での妊娠は、母体にも児にもリスクとなる。妊娠のリスク、健全な関係性、避妊(様々な選択肢と緊急避妊についても)を教育スべきである。避妊へのアクセスを改善することは、性交渉を増やさずに中絶を減らせる。新規の性感染症の半数は、15−24歳の青少年期に起こる。プライバシーに配慮して性交渉歴を聴取し、適切なアドバイスをすることが重要。多くの青少年が、性自認やジェンダーアイデンティーの形成に関して悩みを抱えている。性的/ジェンダーマイノリティーのメンタルヘルスの予防には、家族とのつながりや社会のサポートが重要。臨床医は、本人が望む場合は家族へのカミングアウトを手助けすることも必要となる。

肥満と摂食障害

USPSTFは、青少年のBMIによる肥満スクリーニングを推奨しており、必要があれば包括的な介入へつなぐことが必要である。BMIをフォローすることは、肥満や摂食障害を見つけるきっかけになる。肥満の予防には、1日60分の中強度以上の運動を推奨。運動だけではBMIや健康アウトカムを改善できないため、食事に関するカウンセリングも必要。摂食障害は、合併症や自殺リスクが高く死亡率が上がる重篤な疾患である。多職種でのケアや専門治療に繋ぐ必要がある。

メンタルヘルス

USPSTFでは12歳以上に対してうつ病スクリーニングを推奨。PHQ-2(抑うつ気分+興味の減退)は青少年に対しても妥当性が証明されている。プライバシーに配慮して問診し、うつ状態、自傷や自殺リスクを評価して個別の計画を建てる。うつ症状に対しては、SSRI+精神療法が有効だが、SSRIの使用は自殺のリスクを高めることに注意(2%→4%)

安全

交通事故は、青少年の死亡原因の多くを占める。シートベルトの着用、飲酒運転や運転中のデバイス使用を行わないなどアドバイスする。スポーツに関連する脳震盪もよくある問題なので、脳震盪時の対応やスポーツへの復帰時期などのアドバイスを行う。家庭内暴力や学校でのいじめなどについても問診を行う。

引用文献

”Screening and Counseling Adolescents and Young Adults: A Framework for Comprehensive Care” Am Fam Physician. 2020 Feb 1;101(3):147-158.

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