症例
40代女性 アルコール性肝炎と過多月経による鉄欠乏性貧血を認めている。
臨床疑問
鉄過剰は肝障害を引き起こすことが知られているが、肝障害がある患者への鉄剤投与は安全か?
文献検索
肝障害患者に対して鉄剤を投与して安全性を直接検討した論文は見つけられなかった。
Uptodateでも、日本の添付文書でも鉄剤の禁忌に肝障害は書いていない。
一方で、肝硬変やNAFLD患者では鉄欠乏性貧血を合併しやすいことも知られていて、消化管出血を伴う肝硬変患者の75%で鉄欠乏性貧血あり、NAFLD患者が鉄欠乏状態(Tsat<20%)と言われている.1)
同文献にも鉄欠乏を見つけたら治療するように記載がある。
HCVと鉄(特に透析患者)
C型肝炎においては、鉄がC型肝炎を悪化させ肝臓の線維化を促進させることが細胞レベルの実験で知られている。2)
そして、特にHCV陽性の透析患者においては鉄をIVで補充している群の方が肝機能が悪いことが知られており、貧血を伴う場合には鉄の投与には慎重になる必要があるのではないかと考えられている。3)
結論
肝障害があるからと言って、鉄欠乏性貧血を治療していけない理由にはならなそう。
ただし、鉄過剰は肝障害を悪化させる可能性があるのでモニタリングが必要。
特にC型肝炎のある透析患者で、鉄剤の静注をする場合には注意が必要。
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