AFP9月号に風邪の治療(成人、小児)のReviewが載っていました。
Am Fam Physician. 2019 Sep 1;100(5):281-289.
要点を以下にまとめます。
風邪に抗菌薬は無効!!!
ということを前提にお読みください。
【風邪の予防】
・手指衛生が最も有効(少なくとも15−30秒以上の手洗いを1日数回)
・VitC, VitD, Probiotics, 水うがいの予防効果は限定的
【成人の風邪の治療】
<鎮痛薬>
・NSAIDsは、風邪に伴う頭痛、耳痛、筋肉痛、くしゃみ(なぜ?笑)に有効。
・イブプロフェンのほうがアセトアミノフェンよりも効果が勝っている
<鼻炎薬(Decongestant)>
・オキシメタゾリンが含まれる市販の点鼻薬(ナビシン®など)は、鼻閉の持続期間と程度を改善させる。
・ただし頻回長期使用は、薬剤誘発性鼻炎を起こすので3日間程度の使用に留める。
・ステロイド点鼻は、無効!
<抗ヒスタミン薬>
・単剤の抗ヒスタミン薬投与は、プラセボと比較して無効!
・鎮痛剤などとの併用で、効果を認めた報告があり。
・発症後1−2日目に効果が最もみられた。
<鎮咳薬・去痰薬>
・Cochrane reviewで無効。(ただし、エビデンスの質は低い)
・コデインも、82人のRCTで無効。
<吸入薬>
・イプラトロピウムの点鼻は、感冒後の遷延性咳嗽に有効
・吸入イプラトロピウム(アトロベント®)+サルブタモール(サルタノール®)は、発症後10日以内の咳嗽に有効(発症後20日では、プラセボと比較して無効)
<その他>
・Probiotics(Lactobacillus casei)を3ヶ月間飲んでいた人は、症状が軽かったという報告あり。
・発症3日以内に亜鉛(80−92mg/day)の内服は、症状の持続期間短縮の報告あり。(処方するならノベルジン®だが適応外処方、市販のサプリメントは含有量が少ない)
・水蒸気もCochrane reviewで無効
・VitC, VitDは無効
・VitEは、症状を悪化させる可能性あり。
【小児】
※4歳未満に市販の風邪薬は使用しない!(死亡率上昇の可能性あり)
<鎮痛薬>
・成人同様にアセトアミノフェン、イブプロフェンは有効。
<鎮咳薬・去痰薬>
・アセチルシステイン(ムコフィリン®吸入)は、咳嗽に有効
・はちみつは、1歳以上の小児に鎮咳効果あり
・デキストロメトルファン(メジコン®、シーサール®など)は、無効
・コデインやその他オピオイド系鎮咳薬は無効
<抗ヒスタミン薬>
・小児では、単剤も併用でもプラセボに勝る効果は証明されておらず、害のほうが大きいため処方しない。
<点鼻薬Decongestant>
・感冒に対する点鼻薬の使用は充分な根拠がない。
<気管支拡張薬>
・喘息の無い子供へのSABAの使用は、咳嗽を改善させず、副作用が多いため使用しない。
<その他>
・生食での鼻うがいは、1日6回やると鼻汁、鼻閉が早く改善すると報告あり
・寝るときに首や胸にメンソールなどの入った軟膏(ヴェポラッブ®など)を塗ると鼻閉や夜間の咳嗽が改善する。
・VitDや水蒸気は無効
ということで、知らなかったこともいくつかあり風邪診療Up dateできました。
風邪に亜鉛処方してみたいですが、ノベルジンを数日出したら保険切られそうですね。
やはり風邪の自然経過を患者に伝えて不要な処方を減らす必要がありそうです。
これを読んで僕の風邪処方は
大人:イブプロフェン±抗ヒスタミン薬
小児:アセトアミノフェン±はちみつ(1歳以上)+ヴェポラップ使用推奨
にしようかと思います。
風邪のようなCommonな良性疾患をきっちり診療するのが家庭医の腕の見せどころですね。なかなか自分でもう一度調べ直そうとは思わないので、こういうReviewが出ると助かります。
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