鑑別を挙げる3つの軸 ”3C”
VINDICATE-Pや解剖学的アプローチで網羅的に鑑別疾患を挙げることは非常に重要です。
一方で実際に患者さんを診察するときに頭に思い浮かべている鑑別疾患は3〜5つくらいです。
たくさんある鑑別疾患の中からどんな軸で絞ったらいいのか?という疑問にお答えします。
それが「3C」という3つのCの軸です
- Common:頻度の高い疾患
- Critical:重症度の高い疾患
- Curable:治療できる疾患
Common
当然Commonな疾患ほど目にする確率が高くなります。
腹痛の患者さんを見たら潰瘍性大腸炎よりも虫垂炎を想起すべきです。
それは罹患率を考えると虫垂炎の方が潰瘍性大腸炎も高いからです。
さらに言えば感染性腸炎の方が罹患率が高いです。
どうしても医学部の授業では、稀な疾患とCommonな疾患を並列で扱うので疾患頻度をあまり意識することが少ないとは思います。なにか病気を勉強する時に、この疾患はCommon diseaseなのか稀な疾患なのかということも頭に入れておくことは実臨床では非常に大切です。
Critical
Commonな疾患を想起するのは大切ですが、稀な疾患を見逃していいというわけでは有りません。
特に稀だけど患者さんがその日に死んでしまう可能性があるCriticalな疾患は見逃せません。
腹痛で言えば、腹部大動脈瘤破裂は、そこまで頻度は高く有りませんが見逃すと患者さんの命に関わります。
他にも上腸間膜動脈閉塞症(SMA塞栓症)なども重篤な疾患として挙げられるでしょう。
これらのCritcalな疾患を少なくとも1つは想起しておくのが非常に重要です。
僕は救急外来で患者さんを帰す前に
「仮に自分が診断ミスをしていて、患者さんが明日までに死んでしまうとしたら、それはどんな疾患だろうか?」
と自問自答して、危うい疾患をきちんと考慮したか確認するようにしています。
Curable
3つめのCは、Curableで「治療可能かどうか」という軸です。
診断をつけても治療が無い病気はたくさんあります。
例えば手足が動かしにくいという主訴の場合に、ALS(筋萎縮性側索硬化症)などの神経難病を想起した場合を考えてみましょう。
もちろん神経難病の診断をつけることは大切です。
しかし残念ながらALSを始め神経難病の多くには、有効な治療方法が少ないです。
一方で脳梗塞やGuillan Barre症候群などは、有効な急性期治療があります。
なので救急外来や初診外来で急に具合が悪くなった患者さんをみたら、有効な治療があり、今すぐ治療することが予後を変える疾患を始めに考慮すべきです。
それらの疾患を除外した上で診断がつかない場合に、稀な疾患や難病を考慮して診断を考えていけばいいわけです。
まとめ
鑑別疾患を網羅的に挙げるのも大事ですが、実際に患者さんをみるときにはその中で3つのCを意識して効率よく鑑別疾患を挙げるとよいと思います。
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